フラメンコを代表するseguirilla(シギリージャ)は変拍子である5拍子系の曲種で、カンテのシギリージャグループの名称でもあります。
このシギリージャのスペルはいくつもあり、seguiriya、seguiriya、seguirilla、siguiriya、siguerilla のどれも使われます。私が師事するマエストラ コンチャ・ハレーニョはseguirillaと書くので、私もこのスペルを使っています。
音楽研究家のマヌエル・ガルシア・マトスによると、ローマ時代に実在した葬式の時に泣くことが仕事の女性達las planideras(ラス・プラニデラス)が、シギリージャの原型だと推論しています。
何故なら、プラニデラス達は喪の悲しみや霊の魂を歌っていたらしく、ヒタ―ナ達も葬式の時に泣き崩れるが、その様子はまさにプラニデラスと一緒であり、シギリージャのレトラも死について歌っているからです。
ここからla tona(ラ・トナ)がうまれ、そこからシギリージャがうまれ、シギリージャからcabales(カバーレス)、serrana (セラーナ)、liviana(リビアナ)、Martinete(マルティネーテ)という曲種がうまれました。
つまりシギリージャグループは、シギリージャ、(ラ)トナ、カバーレス、セラーナ、リビアナ、マルティネーテで、バイレ(踊り)でよく使われるのはシギリージャとマルティネーテです。
(2017年10月、弊社で開催した著名なカンタオール ダビ・ラゴスによるフラメンコの曲種を学ぶ特別講座でこの内容が話されました。)
シギリージャのレトラはコンパスの長さが明確に決まっていない為、踊り手はそのレトラにあわせて即興で踊らなければならず、更に死の悲しみや苦しみを表現しながらペソという重さをださないといけないので、フラメンコの中では極めて難しい曲種です。
リズムが難しいためシギリージャを教えない教室もあるようですが、フラメンコを代表する重要な曲種であり、バイレ(踊り)を習っていなくてもカンテはしっかり聞いて勉強しましょう。
| 踊りの曲の構成(伝統的なスタイル例)
サリーダ
プリメラ・レトラ(一つ目の歌振り)
(ファルセータ、エスコビージャ、ジャマーダ)
セグンダ・レトラ(二つ目の歌振り)
(ファルセータ)
エスコビージャ
マチョ
| 曲構成の解説
シギリージャは5拍子系ですが、実際は1コンパスで12拍あります。
① ・ ② ・ ③ ・ ・ ④ ・ ・ ⑤ ・
レトラは前半と後半にわかれていて、レトラの前半は6~8コンパスくらいで、コンテスタシオンがはいり(レマーテともいいます)
後半は6~8コンパスくらいが基本の長さにはなりますが、歌い手によってはもっと長く11,12コンパス歌う人もいます。
シギリージャはレトラが終わったら、必ずレマーテでしめます。
レトラのテンポはゆっくりめで、日本の練習生は♪120くらいで踊りますが、スペイン人のプロになるとレトラをすごい速さで踊る人もいます。
シギリージャの中にマルティネーテやカバーレスのレトラをいれて踊る人もいます。
エスコビージャは踊り手の見せ場であり、難しい足技で苦しみや悲しみを表現していきます。
稀にこのシギリージャの一部にタンゴ系のリズムで踊る人もいます。著名な舞踊家ファナ・アマジャがすごいテンポのシギリージャを踊り、エスコビージャの一部にタンゴ系をいれて途中何もなかったようにシギリージャのリズムに戻して踊ったことがあり、こういうことも出来るのかと衝撃を受けたことがあります。
エスコビージャの最後はスビーダでテンポをあげて、アマチュア練習生でも♪200、プロなら♪250以上のスピードでマチョの歌を踊り昇華していきます。
フラメンコ舞踊の特徴として、どんなに暗い悲しみや怒りを表現したものでも最後はテンポをあげて魂を昇華させるように終わらせるのが伝統的スタイルです。
曲構成やコンパスについての解説は、こちらの動画も参考にしてください。
| 衣装
シギリージャを踊る時は、黒か濃い色の衣装を着るのが基本です。
稀に真っ白の衣装で踊る人もいますが、死について歌っている曲ですから、明るい色の衣装で踊るのはNGです。
黒やこげ茶、紺色などの暗めの色で踊りましょう。