| フラメンコの起源
フラメンコが生まれたのはスペインで、東方からスペイン南部のアンダルシア地方に流れてきたロマ族(ジプシー)が、ユダヤやアラブの影響を受けたアンダルシアの音楽文化と融合して、農作業など労働中に歌われた歌(トナ、マルティネーテ、など)が始まりだと言われています。
ヒターノたち(ジプシー)は、労働の苦しみや愛しい人を亡くした悲しみを歌い、そこにトケというギターが加わり、その音楽にあわせて人々が踊るようになり、少しずつ形式化されていきました。
フラメンコが一般に伴奏されるようになったのは19世紀後半で、カフェ・カンタンテと呼ばれる飲食店で歌われるようになりました。 20世紀後半には、タブラオと呼ばれる飲食店でバイレ(踊り)がメインのショーが始まり、フラメンコが次第に普及していきました。 その後、テアトロ(劇場)公演も盛んになり、フラメンコは世界へと発展し、今日に至っています。
2010年にはユネスコによって、フラメンコはスペインの無形文化遺産に登録されました。
日本ではフラメンコというと踊りのイメージが強いようですが、南スペインでフラメンコというとカンテ(歌)です。
フラメンコの発祥地南スペインには、ペーニャとよばれるフラメンコ愛好家が運営する団体がたくさんあり、週末になるとカンテのコンサートがたくさん催されます。
南スペインに行かれて「フラメンココンサート」と書かれた広告を見たらカンテのコンサートであることが多く、踊りがみたい場合はタブラオに行かれることをお勧めします。
| フラメンコというアルテ(芸術)
日本では、フラメンコというと踊りをイメージされる方が多いようですが、フラメンコはカンテ(歌)、トケ(ギター)、バイレ(踊り)の3つがそろって成り立つ芸術です。
パルマを叩く専門家をパルメロといい、パルマと呼ばれる手拍子と、ハレオと呼ばれる掛け声で盛り上げていくのも、フラメンコの特徴です。
フラメンコが他のジャンルの芸術(例えばクラシックバレエ)と大きく違う点は、即興で歌い、踊られ、弾かれることです。その時の気分で、自分を自由に表現することが出来るのです。
誰かを演じるのではなく、自分の喜怒哀楽を、内面に秘めたものをコンパスというリズムに乗せて表現します。
しかし、この「即興」が自由に出来るようになるには、フラメンコの深い知識と経験が必要になってきます。
またテアトロ(劇場)公演では、オブラ(作品)といって、きっちり振り付けから音楽まで制作して上演されます。これはこれで、即興性とは違う魅力があります。
|フラメンコの偉大なアーティストたち
20世紀前半には、アントニオ・チャコン、マヌエル・トーレやニーニャ・デ・ロス・ペイネスなど、フラメンコの諸形式を形作ったカンタオール(歌い手)たちが現れ、その録音は多くのアーティストの教材になっています。
アントニオ・チャコンの銅像(スペイン)
20世紀後半には、ギタリスト パコ・デ・ルシアがフラメンコ音楽にクラシックやジャズなどの要素を取り入れ、フラメンコ音楽に革命的な変化をもたらし、世界にフラメンコ音楽を普及させ、”フラメンコの神様”と呼ばれました。
パコ・デ・ルシアの銅像(スペイン)
同時期にパコ・デ・ルシアと共に活躍したカンタオール カマロン・デ・ラ・イスラも、現代フラメンコの基盤を築き、多くのカンタオールたちの見本となっています。
インタビューを受けるカマロン・デ・ラ・イスラ
バイレ(踊り)は、アントニオ・ガデスがタブラオ・フラメンコからテアトロ(劇場)フラメンコへと発展させ、世界にフラメンコ舞踊を広めました。
|フラメンコの形態
フラメンコ独特のソニケテというコンパス(リズム)、変拍子のセンティード、ノリがフラメンコを形成しています。
フラメンコはある意味自由気ままなではありますが、絶対に守らなければいけないルールがあります。
絶対に守らなければいけないルールはコンパスです。コンパスという軌道にのって、バイレ(踊り)、トケ(ギター)、カンテ(歌)が、時には自分を主張し、時には相手を尊重し、最後は一体化を目指します。
スペイン全土の古くから伝わる民謡は3拍子系のため、フラメンコを代表する曲種の多くは3拍子系です。
フラメンコを代表するソレアやブレリアは3拍子系で、12拍で1コンパスのアセント(アクセント)は12・3・6・8・10と変拍子です。このフラメンコ独特のコンパス感を身につけるのは難しいのですが、この難しさがフラメンコの魅力でもあり、一度ハマるとやめられなくなります。
フラメンコをリズムで大きく分類すると3拍子系、4拍子系、5拍子系にわけられます。
|フラメンコの曲種(パロ)
フラメンコのカンテは、多くの種類で分類されるので数えきれないほどの曲種が存在しますが、よく踊られる曲種は約20曲種くらいです。
特にスペインのタブラオでよく踊られる曲種は、即興であわせやすいソレア、ソレア・ポル・ブレリア、アレグリアス、タラントス、ティエントス、シギリージャなどが一般的です。
この各曲種の解説は後日書いていきます。