フラメンコを代表するBulerías(ブレリア)は、南スペイン へレス・デ・ラ・フロンテ―ラが発祥で、3拍子系(12拍で1コンパス)の曲種です。
このブレリアは、フィエスタと呼ばれるお祭りでよく歌い踊られ、地方色が強い特徴を持ちます。フィン・デ・フィエスタといえば通常ブレリアを踊るのが一般的です。
著名な舞踊家ロサリオ・トレドが「マルカールとジャマーダ、レコヘルセが出来れば、ブレリアは踊れる」と言っていましたが、確かにシンプルな振付でも粋に個性をだして踊ればブレリアは十分魅せられます。
フラメンコ界を代表する歌い手のダビ・ラゴスにいわせると、ブレリアを構成する3つの様式は、へレス、ウトレラ、レブリハになります。
バイレ(踊り)の場合、ブレリアだけで踊られることはあまりありませんが、3拍子系の曲(ソレア、ソレア・ポル・ブレリア、アレグリアス)の後半はブレリアで踊られることが一般的です。
ソレアの後半は、ブレリア・デ・ロマンセかへレスが一般的。
ソレア・ポル・ブレリアの後半は、ブレリア・デ・へレスが一般的ですが、ハレオやロマンセを使う人が増えてきています。
アレグリアスの最後はブレリア・デ・カイが一般的ですが、しかし近年、マドリッドのタブラオでは、この伝統的なスタイルで歌われなくなってきています。
コンパスさえ守っていれば、他の曲種よりも比較的自由に歌い踊られるのが、ブレリアです。そして、必ずカンテにあわせて踊りましょう。
練習生にとって、ブレリアが難しい!と言われるのは、カンテにあわせて即興で踊っていくからでしょう。
どうしたらカンテにあわせて踊れるか?
それは、ブレリアの音楽をたくさん聞くことです。
南スペインは、町のあらゆるところにフラメンコの音楽が溢れています。
バスに乗ればフラメンコの音楽が流れ
バルやスーパーに行ってもフラメンコの音楽が流れ
テレビをつければフラメンコの音楽が聞こえてきます。
結婚式では、ブレリアが踊られることもよくあり、へレスでは結婚式で披露するブレリアクラスがあるんですよ。普段ブレリアを踊らない人たちも、結婚式ではかっこよくブレリアを踊りたい!という需要があるからです。
ブレリアのノリを体がつかむまで、とにかく聞くことです。楽しみながら毎日聞いてください。
| ブレリアの種類
Bulería de Jerez(ブレリア・デ・へレス)はメディア・コンパスと呼ばれる6拍で歌われ、サンティアゴ(地区)とサン・ミゲル(地区)で、ノリが少し違います。
Bulería de Utrera(ブレリア・デ・ウトレラ)はへレスより遅いテンポで歌われ、このノリで踊る時はアル・ゴルぺとも呼びます。
Bulería de Lebrija (ブレリア・デ・レブリハ)は、アロマンサ(ロマンセのこと)も含まれます。
Bulería de Cadiz(ブレリア・デ・カイ)はアレグリアスの踊りの後半によく歌われるので、アレグリアスと勘違いされることがありますがブレリア・デ・カイという曲種です。
この他にBulería de Sevilla(ブレリア・デ・セビージャ), Bulería de Moron(ブレリア・デ・モロン)などがあります。
| ブレリアのコンパスとアセント
ブレリアは12拍で1コンパスですが、へレスのブレリアはメディオコンパスと言って6拍でまわります。
ブレリア・デ・カイなど(12拍)
1 2 ③ 4 5 ⑥ 7 ⑧ 9 ⑩ 11 ⑫
〇はアセントです。このアセントもあります↓。
1 2 ③ 4 5 6 ⑦ ⑧ 9 ⑩ 11 ⑫
ブレリア・デ・カイなどは、3拍・3拍・2拍・2拍・2拍となります。このノリで足を打つので、慣れてくると振付もとりやすくなります。
ブレリア・デ・へレス(6拍)
⑫ 1 ② 3 ④ 5
この6拍でまわります。
ヘレサーノ(へレス人)によっては、これをこうカウントする人もいます。
① ・ ② ・ ③ ・
アセントが2拍のノリになります。
① ・ ② ・ ③ ・
⑫ 1 ② 3 ④ 5
| ウナ・パタイータ
ブレリアだけで1曲踊ることはあまりありませんので、フィエスタでよく踊られるウナ・パタイータについて解説します。
フィエスタや公演の最後にクアドロで一人ずつ踊りますが、ひと踊りすることをウナ・パタイータといいます。
歌が始まってから中央にでていくパターンと(へレスはこのスタイルが一般的)、踊り手が中央にでてからジャマーダをしてレトラがはじまるパターンとあり、歌にあわせて踊れない練習生は中央にでてからジャマーダをするパターンが無難です。
レトラを一つもしくは二つ踊りジャマーダをして角に行き、エストリビージョという繰り返しの歌で元の場所に戻るのがウナ・パタイータです。
へレスのブレリアはレトラの長さが変わるので慣れないと踊りづらいんですが、よく歌われるブレリアのレトラの長さは7~9コンパスが一般的です。
角に行くことをムティといいますが、この用語を使う人は著名な舞踊家コンチャ・ハレーニョをはじめマドリッドの踊り手のみで南スペインの人たちはあまりこの単語を使いません。日本でもあまりこの単語を聞いたことがないので、知識として覚える程度で問題ありません。
このウナ・パタイータは、とにかく歌に合わせてコンパスにはめて踊ることが重要です。よく練習生が難しいことに挑戦しようとコンパスにハマらない上、歌にもあわないで踊るのをみかけますが、難しいことに挑戦することより、簡単な振付でいいのでコンパスにぴったりはめて更にカンテのノリにあわせて踊ることを重視しましょう。
| 衣装
フィエスタでブレリアを踊る場合、なるべく華やかな衣装がお勧めです。
ボランテというフリルがたくさんあり、色はカラフルで華やかなものがフラメンコ的で素敵です。
真っ黒の葬式みたいな衣装でブレリアを踊るのは、コンサートのトリを飾る踊り手が着替える時間がない場合で、スペイン人アーティストも可能なら最後着替えて華やかに踊るのが基本です。